2023年6月9日から「交流ラウンジ・頑張る在校生」で、クラフトビールについて掲載しています。この取材をしているときに、「農工大生大図鑑」というホームページを立ち上げて、農工大生の考え方や考えていることに焦点を当てて、農工大を紹介している人物がいることを知りました。
農工大生大図鑑HP
https://note.com/noko_daizukan
学生時代には、農学部のWEBオープンキャンパスの企画運営をしたり、府中のローカルFM局で農工大生の紹介をしたりしていた、上木康太郎さんです。
上木康太郎さん
上木さんは、現在も活動を継続しています。今回は、その活動の様子と農工大学に寄せる思いについて、取材させて頂きました。
どの学科を卒業されましたか?
上木
農学部地域生態システム学科の共生持続社会学コースです。地球温暖化を解決しようとして農工大に入りました。高校生の時は、温暖化の問題が社会的に叫ばれていた時でした。
高校生の時っていつ頃ですか?
上木
2011年~2014年で、地球環境が危ないと肌で感じられる頃でした。
地域生態システム学科を選んだ理由としては、文系と理系の両方の手法を用いて環境問題にアプローチしたかったからです。
「学問と学問を超えてそれをつないで新しいことを生み出せる人材が求められている。」と社会的に言われていましたし、私も学際的という領域に興味がありました。
科学者になって技術的に地球温暖化に寄与するという事ではなくて、理系の知識を取得したうえで、例えば法律的な側面から問題解決をしたいと受験生時代から考えていました。
中学の時から理系に進みたかったんですか。
上木
中学生の時はあまり考えていなかったですね。
高校時代に理系に進みたいと思ったんですか?
上木
文系的でもありました。高校生の時は学校の先生になろうと思っていました。
浪人の時に環境問題に目覚めました。周りで騒がれていたという事もありますが、高校時代にテニスをやっていたので、だんだん暑くなってきているのを肌で感じて、昔こんなに暑かったかなって危機感を抱いていました。
中学時代に「30度以上の日が28日連続しています。」とニュースになっていたのを思いだします。今や35度以上の日が連続するようになって、恐ろしい気がしますね。
温暖化していないという人もいますが、庭の木の葉が焼けてしまうような昨今の状況を見ると、明らかに温暖化はしていると思いますよね。
地域生態システム学科は、何先生の研究室に入りましたか?
上木
榎本先生の環境公法研究室に入りました。法律の研究室で、農業や環境の公法について研究を行う研究室です。
環境問題を解決する一つのツールとして法律があるというイメージですね。始めは環境省に行って環境を良くする法律を作りたいと思っていました。
研究室に入りましたが、学んでいくにつれて法律ではあまり解決できないのではないかと考えるようになりました。法律を作るのに省庁のパワーバランスがあるし、経済の力に勝てないという事に気づきました。
研究室時代の上木さん
法律に限界を感じてどのように変わりましたか?
上木
府中市内で市民活動的なことをやるようになりました。環境問題の解決には、法律がこう決まっているからこうだというトップダウン的な流れではなくて、住んでいる人たちの行動から変えるボトムアップ的なアプローチが必要なんじゃないかと思うようになり、地域に出るようになりました。
空き家を使った学生のシェアハウスや、若者世代が地域の課題を解決するため、大人に政策提言をするワークショップの運営をしていました。
地域に出始めたというのは、法律に対する考え方の変化と、もっと実効性のあるところを体感したいという考え方が元になっていますか?
上木
それも一つの大きな要因です。もともと地元の越生町のお祭りに参加していて、地域の色々な世代の人達との交流を楽しんでいました。地域の人とのつながりに興味がありました。
あとは地域で活躍している人は圧倒的に面白い大人が多いと思っていました。地域創生とか地域活性化とか、地域の活性化のために活動している人って、型にはまらず面白い人が多いなと思っていました。そういう人たちと一緒に、プロジェクトを組んで何かをやってみたりして、一緒に時間を共有してみたい、学びたいと思って地域に出るようになりました。
何か新しいことを始めようとする人には、面白い人が多いですよね。私が上木君に興味を持ったのも、会社を辞めてしまったことも含めて、何か面白さを感じたからです。
FMなんかもやっていたようですが、どうしてラジオも始めようと思ったのですか?
上木
今はもう終了していますが、学生主体の「農工ラジオ」というFMの番組を府中市内でやっていました。農工大の魅力発信や地域連携について発信していました。
ラジオを始めようと思ったきっかけは二つあります。
一つ目は、「農工大はもっとすごい」ということを知らしめたかったからです。地域に出ている中で、府中の人はあんまり農工大を知らないと感じていました。農工大のすごさをアピールするときに、中にいる人に焦点を当てようと思いました。
二つ目は、社会の中には色んな考え方があった方が良いなと思っていまして、こんな面白いことを考えている人がいるということを発信したかったからです。大学の授業で生態系も多様性が重要ということで、人間にも多様性があった方が良いのではないかという事を考えていました。
最近一夜限りの復活をさせました。府中のフォーリスの1階のイベントスペースで公開収録をしました。
どんなイベントだったんですか?
上木
「出張農工大ラジオ」という名前でイベントを開催しました。マイクとスクリーンでプロジェクターを使って、農工大の概要説明をプレゼンとインタビューを合わせたトークイベントの形式で開催しました。
いつ頃ですか?
上木
2023年の夏です。今だから話せますが、3週間前に急にやってという形で話が来て引き受けました(笑)。
誰から話がありましたか?
上木
府中市の観光協会の人と仲が良くて、今回のお話を頂きました。府中市の観光協会には、農工大生がインターン生として頑張っていたりします。
大学と府中市の接点が少ないように感じていましたので、府中で農工大の良さを発信できる場があれば、農工大にとっても府中市にとっても良いのではないかなと思いました。
「農工大魅力発信スペシャル」ということで、船田農学部長をはじめとした先生方や現役の農工大生、職員の方にも出演してもらいました。船田農学部長には、農工大の紹介をしてもらい、大学在籍中にお世話になった、林先生に出張授業をしてもらいました。また特任助教の松村先生のお話や、現役の学生さん(農工大ホームページに掲載されている「農工大授業百景」のまとめ役の学生さん)に農工大の先生の紹介をしてもらいました。
農工大魅力発信スペシャルの様子
「農工大生大図鑑」を始めた動機と現状は?
上木
現役の時「農工大生大図鑑」という形でやっていました。始めた理由は二つあります。
一つ目は、農工大生に社会で活躍してほしいと考えていたからです。
農工大生のポテンシャルを最大限発揮するには何ができるかと考えたときに、キャリアの選択肢を増やすことが重要だと考えました。働き方にはいろんな選択肢があります。例えば副業や起業など。
学内を見ると、学生は公務員になりたがっていたり、大企業に目が向いていたりするけれど、選択肢はそれだけじゃないんだと考えました。いろんな選択肢があるので、それらを知って欲しいという事でやり始めました。
農工大生って優秀なだけではなくて人間性も素敵な人が多くて、そんな人たちが活躍できるようにしたいです。
それにサステナブルな社会を実現することが強く求められている中で、農学部と工学部の考え方・知識が必要な時代になると思っています。農工大生が活躍し社会をサステナブルに変えていくために我々が活躍しなくてはならないという使命感もあります。
二つ目は、農工大生の就活やキャリア形成の支援をしたかったからです。自分が就活して色々なことに時間をかけて調べていましたが、先輩に聞くと30秒で答えが出てきたりしました。農工大では就活の知識の集積ができていないと感じました。農工大生の就活の集合知を次の世代に引き継いでいけるものを作りたいと思っていました。
農工大生は優秀だし企業からのニーズもあって、大学として強烈に就職支援をしなくてもそれなりに学生さんは就職できたりしています。でも、そこに安住してはいけないと思います。
大学とすれば、就活のスケジュールの提案や企業の紹介や活躍している先輩の紹介等もっと積極的にすべきだと思います。
社会人と接する機会の少ない学生にとって、卒業生って身近な社会人なのでもっと積極的に交流の場があるといいなと考えます。
「農工大生大図鑑」はそういった意味で重要な活動だと思います。
上木
自分は初めての就職が上手くいかなかったので、その経験も生かしてミスマッチをなくしたいと考え、農工ラジオの社会人バージョンを企画しました。それが「農工大卒業生図鑑」です。
農工大卒業生図鑑
情報が溢れている社会で、情報の得方が重要だと考えています。企業の情報を集めるなら、もっと会社の中の人に聞いたほうが良い。だからインターンに行った方が良いと考えています。リアルな情報に触れることで 自分のよう に就活で失敗をする人を減らしたいと考えています。
農工大生は社会との接点が少ないことが課題だと思っています。キャリアを参考にする時に、親とかに頼ってしまうケースが多いのかなと思います。ただ、もっと新しい情報を知って欲しい、生きた声を伝えたい、そんな思いでイベントを開催しています。卒業生の声が 現役生・卒業生を含んだ農工大生の一つの選択肢になると思っています。
大学が適切な時期に適切な情報を提供して、時期を逸しないよう指導する必要がありますね。また、単に就職率の高さだけではなく、できるだけミスマッチをなくすことが必要だと考えています。それと、就職活動に関するオリエンテーションのようなものをやって、時期を逸しないように指導していく事が必要だと考えます。
同窓会もそのような活動に協力していきたいと考えています。
上木
ありがとうございます。
【編集後記】
お話を聞いていて、まず上木さんの農工大に対する愛を感じました。優しい話し方の中に、筋が通っていてしかも力強さがありました。
交流ラウンジの取材は、現在私(池谷)がやっていますが、若手の視点での取材があったほうが良いなと考えています。上木さんのような若手の方に参画してもらえるといいなと、勝手に考えています。
取材は楽しくて、色々な人の考え方や生き様に触れることができて、まだ続けたいと思いますが、世代交代も必要だと考えています。
こうほう支援室 池谷記