一般社団法人 東京農工大学同窓会

2024.10.21 かがやく同窓生

ブルーベリーの栽培のすすめ

加藤誠(農工院S46)

最近、初夏のころに、果物屋さんには、小さなプラスチック箱に、紫色のブルーベリーが並ぶようになった。
このブルーベリーについて、農学部の園芸研究室の荻原勲教授(現名誉教授)から、資料をいただいた。膨大な研究を成書にまとめた書籍もあるので、興味のある方は、そちらを参考にしていただきたい。

参考文献
1.石川駿二、小池洋男著:ブルーベリーの作業便利帖(種類・品種選びと良く成る株の作り方。)農文協、2006
2.ブルーベリー協会編:ブルーベリー全書(品種、栽培、利用加工)創森社、2005
3.伴琢也著:ブルーベリー(NHK趣味の園芸)12か月栽培ナビ5NHK出版、2006

ブルーベリー栽培を日本で初めて行った

近年ブルーベリーは家庭栽培のみではなく、た。果実に含まれる抗酸化物質の高い健康果実として、注目されるようになって、生食用や加工用にも、消費も生産量も高くなってきた。

昭和39年に福島県園芸試験場長の故岩垣駿夫(たけお)先生を、農学部園芸学講座の教授にお迎えした。岩垣教授は、農林水産省が導入したラビットブルベリ-を譲り受けた。岩垣教授は付属農場で、果樹の生産開発に関する研究を開始された。そして、“ブルーベリーの品種特性、受粉、結実、繁殖に関する研究”を行った。

このことからブルーベリーの栽培は農工大から始まったと言っている。そして、先生は“日本のブル-ベリ-の父”と言われている。これらの研究成果は、着実に挙げられた。その技術は、種苗会社や民間の同好の志により、全国に広められ、今や、栽培面積852.9ha(2007年)、収穫量1800tにのぼり、県別では収穫の多い順に、長野、茨城、群馬、東京、埼玉で、観光農園やジャムやジュースなどの加工用に栽培されている。

さて、附属農場の生産物は、当時国立大学でしたので、官有物である。したがって、生産物は市民に払い下げ処分を行う必要があった。そのため、通常、農場の生産物は、青果市場に出荷する方法がとられていた。その時の売価が、払い下げ値段となった。

当時の日本社会では、ブルーベリーは生食用、加工用にも全く生産されていなかった。すなわち、ほとんどの日本市民は、ブルーベリーの存在すら知らなかった。したがって、ブルーベリーの値段が決められなかった。そこで、農場では、外国人が多く住む東京青山の“紀ノ国屋”の青果棚に恐る恐るこれを陳列願ったところ、またたく間に完売。この時の売値が、日本における最初の値段となった。この時の値段について、筆者は今、失念してしまった。

ブルーベリーの基本的性質

ブルーベリーは、Vaccinium属Cyanococcus節の低木性果樹の総称である。
学名:Vacciniumspp
科名:つつじ科
属名:スノキ属
原産地:北米大陸
和名:ブルーベリー、ヌマスノキ、アメリカスノキ
英名:blueberry
開花期:4-5月
花色:白
植え付け期:落葉期で関東以西では11-3月、寒冷地では2月下旬~3月下旬
収穫期:6-9月
耐寒温度:-20--10℃

ブルーベリーの1年間の生育サイクル

3月中旬に萌芽し、4月に開花し、6月から7、8月頃に収穫、その後花芽分化を8月から10月上旬頃に行い、落葉し、冬季の休眠に入る過程を経ている。栽培ブルーベリーは次の三種類に分類され、それぞれの種の中には多数の個体がある。

A,ハイブッシュブルーベリー(HB種)
(1)ノーザンハイブッシュブルーベリー(NHB種)
(2)サザンハイブッシュブルーベリー(SHB種)

B、ラビットアイブルーベリー(RB種)の三種類に大きく分類される。
これらは生産者側には栽培されやすい低木果樹で、軽作業、有機栽培ができ、観光農園が行える。消費者側としては、優れた健康機能がある。アントシアニン含量が高く、抗酸化能を有する果実である。そのため、国内での生産量や消費量は増大した。

三種の栽培ブルーベリーの特徴

(1)ノーザンハイブッシュブルーベリー(NHB種)
冷涼な地域に適する。休眠が深い(低温要求時間800-1200時間)。高温下では樹勢が弱く、栽培が難しい。収穫期6月中旬から7月中旬。収量は少。
早生、中生、晩生の品種があり、収穫期が長い。中、晩生品種の中では果実が大きい。糖酸のバランスが良い。食味が良い。

(2)サザンハイブッシュブルーベリー(SHB種)
温暖な地域に適する。休眠が浅い(低温要求時間100-400時間)。樹勢が弱く、栽培が難しい。収量は少。早生、中生の品種があり、収穫期は6月中旬から7月上旬。果実は大きいが収量は少ない。糖酸比が高く、甘く感じる品種が多い。

(3)ラビットアイブルーベリー(RB種)
温暖な地域に適する。休眠中程度(低温要求時間400-800時間)。樹勢が強い。収量は多い。晩生で収穫期は7月中旬から8月下旬。が遅い。一果あたりの重さが小さく果皮が硬い)収量が多い。濃厚な食味、やや酸味が強い。糖酸比が低く糖度も高いが、酸度も高い。

ブルーベリーの栽培

苗について:種から発芽したものを苗とする方法もあるが、通常、成木の若い細い枝を挿し木で繁殖させる。

土壌について:植物は、水はけのよい、pH6.5程度の弱酸性の土壌を好むが、ブ
ルーベリーは水はけのよい土壌を好むことは、他の植物と同様であるが、酸性の強い、pH5.0程度でよく。かえって、中性や弱酸性の土壌を好まないことがある。
したがって、プランター栽培などでは、野菜用の市販の土に、ピートモスを酸性調節に使う。露地栽培では、畑地土壌にピートモスを攪拌し、pH調整する。

植え付けの苗数:果樹では、授粉用に同系統の別品種を近くに植える。そうすれば、花粉が良好に行われれば、果実の実りが良い。

植え付け:11月から3月の落葉期に行う。プランターにて栽培する場合は、pHを調節した土壌をプランターの縁より3cmほど下げて、土壌を適当に転圧する。この3cmは、給水の際の水だまりである。苗は挿し木時の土のあった同じ高さに植え付け、支柱をたてる。水やりは、土壌環境に合わせて、たっぷり給水する。
畑での栽培の場合は、苗を移植する畑に深さ、直径とも、40-50cmの穴を掘る。ピートモス40-50リットルと腐植土40リットルと掘り起こした土と混ぜて、掘った穴の半分ほど客土する。苗木の根を軽くほぐして、苗木の根元が地面の高さになるように、植え付ける。支柱を立てる。水はたっぷりやり、乾燥を防ぐために、根元には、わらとかバークチップを敷く。

管理など:果実をつける枝を作るために摘心する。人工授粉して、確実に受粉させる。花芽と葉芽を注意して剪定する。病気害虫は少ない。病虫害にかかった場合でも、薬剤に頼らない病害虫駆除を工夫する。
おいしい果実は鳥による被害が大きいので、ネットで覆う。

ちょっとした住宅のお庭をお持ちの方、マンションなどで、プランターのおける場所をお持ちの方、ブルーベリーは低木であり、病虫害がほとんど無いなど、栽培が非常に容易の果樹です。ぜひブルーベリーの栽培をお始めになってはいかがでしょうか。

上の二枚の写真は、三輪正幸氏のホームページより引用

加藤誠先生は、東京農工大学名誉教授。長年本学の農業工学関係の教育・研究に携わって頂いた方です。(こうほう支援室池谷記)