一般社団法人 東京農工大学同窓会

2023.3.25 かがやく同窓生

33年かけて積み上げた1000勝

調教師の国枝さんを知っている方は多いと思います。東京農工大学同窓生だということを御存じですか?
知っているという方もいらっしゃると思いますが、国枝氏が2022年7月2日(土)にJRA通算1000勝(重賞61勝)を達成しましたのでご報告したいと思います。
獣医学部会便り編集委員の許可を得て、「獣医学部会便り99号(2022年10月発行)から転載」という形ですが、ご紹介します。

こうほう支援室 池谷記

日本中央競馬会通算1000勝達成の思い

日本中央競馬会美浦トレーニングセンター所属 調教師
国枝 栄(昭和53年卒)
ひょんなことから競馬に興味を持ち、馬の獣医師を目指して東京農工大学に入学したのが昭和49年(1974年)である。「人には添うてみよ、馬には乗ってみよ」と言うことで早速馬術部に入るとたちまち馬の魅力に憑りつかれ勉学そっちのけで馬中心の生活を送った。一応大学を出て獣医師の資格は得たものの馬術部卒業と言う方が的を射ていたのである。尤も卒業というほどの実績は残せなかったのであるが、そんな折に、日本中央競馬会が美浦トレーニングセンターを開場したのを機に競馬の世界に飛び込み自らが競走馬を調教する機会を得た。
平成元年(1989年)に調教師免許を取得し、以来今日まで競走馬の調教に携わってこられ、何とか中央競馬通算1000勝を達成することが出来た。競馬の世界に足を踏み入れてから約45年、競馬社会も大きく様変わりしてきた。日本社会の規制緩和、国際化が進む中、競馬もその流れにあった。閉鎖的だった競馬サークルが解放的になり馬券の売り上げも大きく伸びて社会において認められる存在になった。またジャパンカップ開催を機に競馬の国際化が進み、競馬後進国であったのが今や日本調教馬が海外で主要なレースを勝ち世界においてもメジャーな地位を築きつつある。そんな中、アーモンドアイという競馬史に名を残す名馬に出会えた事は僥倖と言うしかない。
「無事これ名馬」という格言があるが人もまたこれにしかり。大過なく無事にここまでこられたのもいろんな方々の協力、助言があってのことと感謝しているところです。競馬は今やメジャーな娯楽、スポーツとなり、そして国の財源として寄与している事をしっかりと認識してこれからもファンの皆様に楽しんで頂けるように馬と共に歩んで行きたいと思っております。

1000勝目を挙げた国枝栄氏(2022年7月2日福島競馬場にて撮影)

国枝 栄氏(昭和53年卒)が日本中央競馬会(JRA)通算1000勝達成

田谷 一善(昭和46年卒、本学名誉教授、獣医学部会会長)
国枝栄氏の活躍については、これまで獣医学部会便りで紹介してきましたが、2022年7月2日(土)JRA函館競馬場の第10競走で、クライミングリリー号が1着となり、JRA通算1000勝(重賞61勝)を達成しました。史上15人目、1990年の初出走から33年かけて積み上げた1000勝、現役調教師では唯一の大台達成の偉業を成し遂げました。国枝氏は、獣医学科に在学中は家畜病理学研究室に所属し、課外活動では馬術部で活躍されました。
国枝栄氏は、本学卒業後は、当時開場されたばかりのJRA美浦トレーニングセンター、山崎彰義厩舎で調教助手として就職。1989年に調教師免許を取得し、翌1990年に国枝厩舎を開業。初出走は1990年2月4日、東京競馬場第3競走のシャインハード号で11着。初勝利は同年3月10日、中山競馬場第10競走のリュウカムイ号でした。2001年から2022年にかけては、22年連続で年間20勝以上のペースで勝ち星を積み重ねてきました。アパパネ号(2010年)、アーモンドアイ号(2018年)と2頭の3冠牝馬を育てるなど、JRA・G1レースは通算22勝を挙げています。今回の1000勝には含まれていませんが、海外の有名なレースであるドバイターフ(G1)でもアーモンドアイ号が日本生産馬として優勝して、国際的にも国枝氏の活躍が評価されています。
国枝栄氏のJRA1000勝の活躍を100勝ごとに振り返ってみますと、以下の様な経緯です。

  • 初勝利:1990年3月10日の中山競馬場第10競走(千葉日報杯)・リュウカムイ号
  • 通算100勝:1996年5月4日の東京競馬場第3競走(未勝利)・シンコウガッサン号
  • 通算200勝:2001年3月18日の中京競馬場第8競走(500万)・ブラッドオレンジ号
  • 通算300勝:2004年6月13日の東京競馬場第5競走(500万)・ヒシシンエイ号
  • 通算400勝:2007年1月21日の中山競馬場第11競走(AJCC)・マツリダゴッホ号
  • 通算500勝:2009年12月12日の中山競馬場第9競走(南総特別)・ダノンブライアン号
  • 通算600勝:2012年9月29日の中山競馬場第9競走(習志野特別)・サトノアポロ号
  • 通算700勝:2015年5月31日の東京競馬場第7競走(500万)・アペルトゥーラ号
  • 通算800勝:2018年1月7日の中山競馬場第12競走(1000万)・レッドローゼス号
  • 通算900勝:2020年3月21日の中山競馬場第5競走(未勝利)・アンティシペイト号
  • 通算1000勝:2022年7月2日の函館競馬場第10競走(洞爺湖特別)・クライミングリリー号

これからも、健康でご活躍され、さらに勝利数を積み重ねて下さることを期待しています。

999勝目を挙げた国枝栄氏(左が国枝栄氏、右は田谷一善、東京競馬場事務所前にて2022年6月26日撮影)