今から50年以上前、私(こうほう支援室池谷)がまだ学部学生だった頃、夜に本館前から多くの車が出ていくのを見かけました。当時、農工大自動車部主催のラリーに参加している他大学自動車部の車列でした。
当時、公道のチェックポイントを通過して、既定の時間に走破するというラリーが開催されていました。
自動車部の活動拠点は工学部敷地の北西にあって、「活発に活動しているな」と思っていました。
そんなこともあり交流ラウンジを始めた頃から、いつか自動車部の取材をしたいと考えていました。
この度、自動車部部長の大原空澄さん(機械システム工学科3年)に取材を申し込んだところ、快諾して頂きましたので、2025年6月初旬に自動車部のピット(車両の整備を行う施設)でお話を聞きました。
大原さん
Ⅰ:農工大に入学
ご出身は何処ですか?
大原
生まれたのは埼玉です。今も埼玉の川越から通っています。電車だと1時間半くらいで、車だと2時間くらいかかることがあります。
高校は何処の高校でしたか?
大原
川越高校です。
高校生のとき、コロナ禍で色々と活動が制限されていたわけですが、高校の授業はどのように行われていましたか?
大原
入学して1学期はほぼオンラインでした。8月に入ってから、「初めまして」みたいな感じでした。寂しい感じではありました。
大原君が大学に入学した年に、コロナ禍が開けて工学部学園祭が復活しました。その年の新入生は、高校時代に学園祭を経験したことがない人がほとんどで、心から楽しんでいる様子を見てとても嬉しかったことを思い出します。
大原
自分の高校の学園祭はとても盛大です。ウォーターボーイズが有名で、多い時には4万人もの人が来てくれていました。コロナ禍で3年の時にやっと再開することが出来た状態だったので物足りない感じはしていました。
機械に興味を持ったきっかけは?
大原
小学校の頃から自動車が大好きでした。父が車好きでスポーツカーに乗っていて、子供心に「かっこいいな」と思っていました。
また、小さい頃からミニカーを買い与えられていて、街を走る車に興味を持つようになりました。高校生の頃から、エンジンにも興味を持つようになって、車にはまっていきました。
農工大が第一志望でしたか?
大原
子供の頃は農工大のことは知りませんでした。農工大を知ったのは高校2年生か3年生の頃です。
前期試験は東工大を受験しましたが、駄目だったので後期で農工大を受験して合格することが出来ました。
後期を農工大にしたのは、自動車部の存在が大きかったからです。また、ポンサトーン先生の自動制御の研究室で研究したかったことも大きな動機の一つです。
高校3年生の時に、塾の先生から「自動車に興味があるならば、この研究室が良いのでは?」と紹介されました。研究室に入るのは3年の後期からなので、まだ研究室には入っていませんが・・・
今何年生ですか?
大原
機械システム工学科の3年生です。秋には研究室体験配属が始まります。
農工大に入ってどのような感想を持ちましたか?
大原
もともと自動車が大好きだったので、自動車部に入って毎日充実した生活が送れています。
昼休みはいつももここにきて、仲間と一緒に過ごしていてとても楽しいです。
みんなが集まるピット
私は学生時代、野鳥研究会と植物研究会に入っていましたが、その時の仲間とは今でもつながっています。サークル活動期間って70年余りの人生の中でも重要な時期だったと思います。
大原
そういわれると、自信を持ってサークル活動を楽しみたいと思います。人との繋がりって、サークル活動をしているとどんどん増えますね。
農工大が大好きな同窓生が多いと感じます。20歳前後で多感なときに過ごした人間関係が良かったのでしょうね。私も、夜遅くまで仲間と飲み明かしたりしました。
大原
今は、部室に8時以降いてはいけないので、制限は少しありますが・・・
Ⅱ:自動車部の仲間たち
自動車部は今何人の部員がいますか?
大原
先輩たちの時代はコロナ禍で部員もすごく少なくなって一時期廃部の危機もあったそうです。今はコロナ禍も終わって、部員は30人います。
自動車部の仲間たち
機械システム工学科の人が多いですか?
大原
そうですね、機械システム工学科の人が8割くらいです。
新入生には物理系の人や生体医用システム工学科の人や知能情報システム工学科の人も入ってきて、多様化しています。
農学部の部員もいますか?
大原
2人ほど入っています。新入生歓迎会の時に、わざわざ農学部からやってきて入部してくれた人もいます。自動車が本当に好きなのだと思います。
農学部の部員も、工学部で開催される週2回の会議の日には必ず来てくれます。
新入生の勧誘はどのようにやっていますか?
大原
私はコロナ禍が明けた頃に入学しましたので、まだ新入生歓迎会というものは開催されていませんでした。
私が2年生になった時に新入生歓迎会が再開されて、自分たちが作ったスライドとかを使って新入生の勧誘をしました。
自動車に興味のある人は多いから、新入生は結構集まるのではないですか?
大原
最近の学生は、自動車に興味のある人が昔に比べて減ってきていて、車を持っている人も少ないような状態です。
心配な状況ではありますが好きな人は好きで、なりふり構わずに入部してきます。コアな人は相変わらずいますね。
部室には部員がよく集まっているようですが・・・
大原
昼休みに部室に皆で集まって、OKマートに買い出しに行きます。ここだと、生協よりもOKマートの方が近くて、結構安いので利用しています。
一年生の前期はエリプスや生協を利用していましたが、OKマートの良さを知ってからここで昼食を食べるようになりました。
部室から見ると、軽自動車が多く置かれていますよね?
大原
今は、自動車部として6台軽自動車を所有しています。
登録は自動車部として登録するのですか?
大原
登録上は自動車部の人の名義になります。卒業すると名義の変更をするようになります。
私たちの頃は、部室前に解体してあるような車がごろごろしていましたが・・・
大原
昔は、廃車とか汚い車がごろごろしていたそうです。私の少し上の先輩達が、色々掃除してくれて、綺麗になりました。
ここのピットも塵であふれていましたが、掃除をして綺麗になって使えるようになりました。先輩方には感謝しています。
綺麗になった部室前
整備士の資格を持っているような人はいますか?
大原
自分たちは持っていません。自分の車は自分で直せますが、他人の車は直すことは出来ません。
Ⅲ:自動車部の活動
部活動とするとどのようなことをしていますか?
大原
軽自動車を使って、埼玉県の本庄サーキットでレースをすることがメインの活動です。メンバー交代をしながら5時間の耐久レースをしています。
5時間の耐久レースは、何人で乗り継いでいますか?
大原
6人から7人で乗り継いでいます。20分から30分を一人2回くらい担当します。
スピードを競うレースですか?
大原
5時間の中で何週走れるかという事を競います。スピードもそうですが、車の耐久性も求められます。
途中のタイヤ交換とかもしますか?
大原
タイヤ交換はしません。車が故障したりしたら、途中でも頑張って修理をします。
農工大からは、何台参加しますか?
大原
2台出します。
大会の様子
軽自動車の大会という事ですか?普通の車の大会はありますか?
大原
普通の車の大会もあるようですが、大学生とすると軽の車での対応になってしまいます。自動車税などのお金の問題があります。燃費の面でも軽は助かります。
大会は国公立大学の大会ですか?
大原
そういう大会ではなくて、サーキットが主催している大会に参加しているといった感じです。
参加しているほかの大学もあります。成蹊大学や静岡大学、学習院大学、群馬大学、新潟大学、都立大学などが参加しています。
年間何回くらいありますか?
大原
今までは年間4戦でしたが、今年から3戦になりました。この間1戦が終わって、次が7月になります。
トロフィーが飾ってありますが、大会の物ですか?
大原
去年は、総合優勝することが出来ました。
年間総合優勝を獲得
普段の活動とすると、サーキット参加に向けて準備をする感じですね。
大原
そうですね。あと週に1回火曜日にみんなで集まって、活動方針を決めたりして、意見交換をしています。備品の購入計画や、練習スケジュールなどを議論します。
練習というのはどういう事をしますか?
大原
サーキットの現場に行って練習しています。サーキットがフリー走行日というのを設定していて、誰でも走れるようにしてくれています。
新入生も練習を重ねて、どんどんうまくなっていきます。タイムも目に見えて良くなってきます。自分が上達していることが、数字で出てくるので励みになります。
事故が起きたりしませんか?
大原
横転したりすることはあります。中にいる人に重大な損傷が出ることはほとんどありません。ヘルメット、靴とレース用のつなぎを着て、本格的にやっています。
車も、レース用のシートやフレームを取り付けて、横転しても車のダメージを軽減するように工夫をしています。
完璧ではありませんが、安全性は追及しています。
私たちの頃は、夜中に一般道を使ってサーキットをしていましたね。通過ポイントを決めて設定時間内に走破するというようなレースをやっていました。
大原
先輩からは、昔そのようなことをやっていたと聞いたことがあります。よくできたなと思います。
その当時は自分たちで主催していたので、企画力みたいなものはついていたと思います。
大原
他大学の人との連絡調整などもやっていたわけですよね。コミニュケーション力もついたでしょうね。
今でも、合宿の計画を立てたり実施したりすることは、企画力向上に一役買っていると思います。
大原
それは感じています。サークル活動をして楽しみながら身につけている感じですね。
合宿は、夏と冬の2回やっています。夏合宿は、福島のリンクサーキットに行っています。皆で車に分乗して、高速を使わずに下道で7時間くらいかけて現地に向かう人が多いです。冬は、富士スピードウェイのジムカーナコースという所に行きます。
普段はドライブをしたりしますか?
大原
部としての活動ではありませんが、個人的に自動車部の皆で、ドライブに出かけたりすることがあります。
都心の夜景とか見に行きます。奥多摩に行ったりもします。奥多摩は東京なのかというくらい自然がいっぱいで癒されます。
その他の活動は何かありますか?
大原
5月の工学部学園祭(皐槻祭)の時、模擬店を出店しました。
今年は、レモネードを販売しました。当日が寒くて売り上げは去年の半分くらいでした。でも、皆でやれてとても楽しかったです。
車の展示とかは無かったのですか?
大原
今年から認められて、部の軽自動車を展示しました。子供たちが来てくれて、乗ってもらったりしました。
自動車部の軽自動車
Ⅳ:日常の活動費について
部活の車の維持費は部で負担しているのですか?
大原
部で使用している車は、部費から出しています。
部費っていくらくらいですか?
大原
年間一人24,000円です。パーツも高かったりするので、それくらいは必要になります。車って、お金がかかるなってつくづく感じます。
アルバイトはしていますか?
大原
塾の講師をしています。週4日3~5時間やっています。
そのほかにも、時々富士スピードウェイで開催しているレースのアルバイト等もしています。
日高屋でバイトもしていました。1年で辞めましたが、いい経験にはなったと思います。いろいろな人と繋がれますね。
奨学金は貰っていますか?
大原
貰っていません。アルバイトをして、部活の資金にしたりしています。
授業料や大学に関するお金は基本家から出してもらっています。自分の私的な活動は、自分で稼いでいます。
私は家庭教師をやっていました。相手の分からない所を把握することが重要だと思いました。
大原
私も同感で、相手が何を考えているかを理解することの重要性を学びました。
「何が分からないのか」「なんで分からないのか」を把握して教えると、一気に学力が上がることが多いです。
嫌な言い方だけど、「顔色を見る」という事は結構重要だったりしました。顔色を見ると「分かっていないな」と感じることが出来ます。
大原
自分も、いいアルバイトをして良かったなと思います。相手を理解するという訓練が出来たように思います。
Ⅴ:今後の研究活動について
部活としては3年生までやって、あとは退部するような感じですか?
大原
自動車部は愛好会的な活動をしていて、1年生から修士の2年生まで入っている感じです。
現役としては3年生の後期までの活動になりますが、その後も入り続けます。今私は部長ですが、上には多くの先輩たちが所属しています。
今後、研究室で自動車のどういう所を研究していきたいですか?
大原
まだ漠然としていますが、ガソリンで動くエンジンのことを研究してみたいと思います。もちろん電気自動車にも興味があります。
いま電気自動車への流れがありますが、エンジンというのは駆逐されてしまうと思いますか?
大原
エンジンには生き残って欲しいですし、すべて電気自動車になるとは考えていません。
私が学生の頃は、機関車が駆逐されて電車に切り替わっていく時代でした。でも今でも機関車を走らせていますよね。
大原
機関車はどこか人間臭さがあって、エンジンも同じような側面があると思います。ぜひ研究を重ねて、車のエンジンも生き残って欲しいと思います。
エンジンって車の心臓みたいで、機械だけれどもどこか人間臭さを感じることが出来ますよね・・・
大原
自分も持っている車がありますが、その車への愛着は人一倍あります。
いっぱい壊れますがそれを直すと、遠いところまで自分を連れて行ってくれます。自分がどこを直したかを把握しているので、次この辺が危ないかなとか考えることがあります。
私は、南極で越冬したことがあって、大陸の奥地まで行くと自分で雪上車を修理しなければならない事があります。直して動くようになった時には感動します。
もちろん指導してくれる人はいますが、その指導者はすごいなと思います。
大原
自分でやったことが、結果として現れるという事は励みになりますね。自分も、その指導者のようになりたいと思います。
将来は、研究系に進みたいですか?
大原
開発とかいった方向性を考えています。
機械系の人は、エンジン系を目指しているのですか?
大原
エンジン系もそうですし、飛行機とか宇宙とかといった方向性を目指している人もいます。翼の設計とか、流体力学なんかを研究したい人もいます。
Ⅵ:最後に
このインタビュー記事はホームページに載せるので高校生も見ます。そんな高校生にアピールすることはありますか?
大原
少しでも車に興味のある人は、一回ここに来てください。色々な先輩の車とかに乗れて、普通の大学生ではできないことがここではできます。
自分の車を持っていなくても、免許を取ったら車でドライブに行く事も出来ます。常に車と共にいる生活がここにはあります。
もし農工大に入ったら、是非自動車部を覗いて、一緒にドライブに行って、興味を深めて欲しいと思います。
レースに出るとか出ないとかは、どちらでも良いと思います。車のある生活を楽しんでもらいたいと思います。
私たちも一緒に楽しんでいます。
本日は、取材に協力してくださり、ありがとうございました。歴史のある自動車部の良さを継承して行って欲しいと思います。
大原さんへのインタビューの感想
一番感じた大原さんの印象は、自動車部の活動を心から楽しんでいるという事でした。また、自動車部の他のメンバーも部活動を謳歌していることが伝わってきました。
インタビューをしている最中にも、大原さんの先輩が来て自分の自動車を修理していましたが、手を止めて撮影にも協力してくれました。大原さんと先輩との絆を感じることができました。
自分の将来の研究活動に繋がる部活動と仲間を大切にしている姿勢に、共感を覚えました。
これからも周囲の人達を大事にして、未来に向かって進んでいってほしいと思いました。
こうほう支援室 池谷記
車の修理に来ていた先輩