一般社団法人 東京農工大学同窓会

2023.3.25 がんばる在校生

里山が苦しむ獣の被害に狩りで立ち向かう

私(こうほう支援室 池谷)が昭和46年に、日光の山奥に野鳥の観察に行ったことがあります。当時は、シカの保護について議論があった頃で、自然保護研究室が日光の山奥で鹿の個体数の観測等をしていた時代でした。
野犬がシカを襲うということで、野犬対策について議論していた様に思います。昨今は、観光地をドライブしていると、突然鹿が現れて衝突しそうになるくらいシカが増えています。また、クマ・イノシシ・サル等が民家の近くに出没して被害が出るような状況になっています。
全国的に、多くなりすぎたシカ等を狩猟により捕獲して個体数を管理しようとする活動が始まっています。また捕獲した動物を、ジビエとして利用する活動が広がりつつあります。

このような状況になった一因に、人口減少による里山の荒廃や猟師の減少があるといわれています。このような現状に、狩りで立ち向かおうとしている学生さんのグループのご紹介をします。

インタビューをしたのは、狩り部の代表の安田和真(地域生態システム学科3年)さんです。

初めに農工大を選んだ理由は?

安田
野生動物を研究したかったのと、自宅から通える大学ということで農工大を選びまし
た。

野生動物を好きになったきっかけは?

安田
兄が野生動物好きで、それに感化されました。家の近くに田んぼがあって良く遊んでいました。カエルを捕まえたりして、小さい時から自然に触れていました。

農工大学に入った印象は?

安田
穏やかな人が多く、まじめに取り組んでいる感じが自分に合っていました。

卒論ではどんなことをやりたいのですか?

安田
丹沢山系にニホンジカが入らないようにする柵があります。柵の中には植物がいっぱい茂っていますが、柵の外は茂っていません。シカが食べてしまうからです。貴重な植物を守るために柵で一定の区域の自然を守っています。今のところ柵の中の貴重な植物等は調べられていますが、動物についてはあまり調べられていません。繁殖したり食べ物を食べたりしている動物を調査しようと考えています。柵の中の動物がいかに生活しているかを調べることは、生態系を理解するうえで重要なことだと思っています。

狩り部の話に移りますが、いつごろから活動が始まりましたか?

安田
16年くらい前に創設されています。サークルとしてではなく、農ゼミの中に存在しています。

狩り部の部員数は?

安田
70人くらいです。2022年に入ってきた人は20人くらいです。

ずいぶん多いですが、勧誘の方法は?

安田
SNSで勧誘したり、ZOOMを使ってオンライン勉強会を開催して理解を深めたりしました。また、チラシを配ったりもしました。

狩猟免許を持っている人は何人くらいいるんですか?

安田
10人くらいです。みんなが狩猟免許を持つことを目指しているわけではありません。採った肉を食べたいとかという動機で入ってきても良いと考えています。活動をとおして次第に狩り部の取り組みに興味を持ってもらえたらと思っています。

入部した人にはどんなことを学んで欲しいですか?

安田
狩猟という方法によって、動物の個体数の調整に積極的に関与するという考え方を若い人たちに理解してもらう事が必要だと考えます。

コロナ禍もだいぶ変化してきましたが、今の活動はどのように行っていますか?

安田
昨年は、感染対策をしながら埼玉県の入間で罠猟をやったりしました。アライグマの捕獲をしています。
シカとイノシシも対象にして11月15日から2月15日の狩猟期間に県に申請して行いました。
1日に2~3人で罠の見張りに行きました。45人で取り組みました。

今年はどこか行きましたか?

安田
東京の青梅でくくり罠をやろうと思っています。足をくくるような罠です。 カメラをセッティングしてどんな動物がいるのか事前に確認したうえで罠をかけようと思っています。

多摩川の河川敷に様々な動物が生息しているようですが…

安田
イノシシなんかもいます。耕作放棄地に動物が生息するようになってきて、動物の生息範囲が山から里に下りてきています。

OBとの繋がりはありますか?

安田
あまりなかったので、2021年は「OBと繋がろう」的な取り組みをしました。初代の部長さんとかを呼んで、ZOOMではありましたがネット会議の形で今の活動について紹介したりしました。
繋がりがないので、OBの方の連絡先が分からずに多くの方に参加いただくことはできませんでした。

同窓会とすると、そういった繋がり形成を手助けできたらと思っています。同好会という組織があって、活動した同好会に2万円を援助しています。同窓会では、そういったネットワークを作ってほしいと考えています。

狩猟免許を取るのは大変ですか?

安田
免許試験は、筆記と実技があります。実技は罠を設置したり銃の構え方とかを試験されます。講習会とかがあるので、真面目にやれば取れます。試験にはお金が結構かかるので大変といえば大変です。

免許はいつ頃取りましたか?

安田
1年生の秋にとりました、罠では捕獲したことはありますが、銃ではまだありません。
銃所持許可免許は自分とあと2人くらいが持っています。こちらは、実際の銃の取り扱いが審査されます。最近取ろうという人が増えてきています。

野生動物を管理するということでは、研究という方向と現場で実際に活動するという方向がありますが…

安田
野生動物を管理する会社で働いているOBもいます。その方が、現場に連れて行ってくれることもあります。

猟友会とのつながりは?

安田
部活としてはありませんが、個人的にはつながっています。猟友会の茨城県の支部に入っています。そこから大学に2時間かけて通学しています。

最後に来年の新入生へのメッセージをいただきたいのですが…

安田
入学して1年目は基礎科目が多いです。なかなか野生動物のことをやりたくてもできません。部活をやると1年目から現地に出て自然環境や野生動物を肌で感じることができます。
そういうことに興味があれば、是非一緒に活動しましょう!
1年目から、野生動物の管理に携われます。勉強を机の上でしているだけでなく実際にやれるのが強みです。

インタビューの感想

今回のインタビューで感じたことは、「狩り部が課題解決に向かって真面目に取り組んでいる」ということでした。
2022年の北海道支部総会で知り合った同窓生の中に、同様の問題意識をもっていて狩猟免許を取った人がいたので、狩り部に紹介しました。課題解決に向けて、活動の輪が広がるといいと思っています。

こうほう支援室 池谷記